AV出演被害防止・救済法案に関する省庁とヒアリング2022年5月24日


 


AV出演被害防止・救済法案に関する省庁とヒアリングに参加しました。

この会は、法案実務者ヒアリングで、支援団体、被害者団体からの質問に「時間がない」と、回答がなかったために、日本共産党からの呼びかけで開催されました。

弁護士、支援団体、市民団体、被害者からの質問に省庁が回答するという形式でした。

♦︎現在AV撮影で行われているような内容が公序良俗にあたると個別事象について回答できない。

◆貧困、発達特性のある人、性暴力被害者、虐待サバイバーによる性的自傷、トラウマの再演で自ら望んで出演した被害者が想定されていたかは、お答えできない。

♦︎契約を拒絶することが難しいと思われる貧困、性暴力被害者、発達特性のある人への支援につなげていく努力をする。支援団体の養成も行っていく予定(具体的には決まっていない、予算さえも決まっていないので実効性が不明)

♦︎AV人権倫理機構が自主的な取り組みで行っている撮影5年半後に無条件で取り消すことは、新法と無関係。(5年半後の取消しは継続?)


♦︎売春防止法に違反する行為(不特定多数との性交)は許されるものではない。性売買合法化ではないと言うが、契約に基づき、性行為に関して金銭が支払われることには変わりがない。

♦︎生命の安全教育について

♦︎原状回復についてギャラ返還の必要性が生まれる。これまで裁判によって返還しなくてよかったと支援団体の指摘があるが、逆行。

♦︎刑法、売春防止法、職業安定法、労働者派遣法などの違反して契約違反になった事例がない。起訴できていない。

♦︎ 『性交禁止』を規定できなかったのは議員の一致をみなかったからという回答は、表現の自由の観点からという、前回ヒアリングと違う。

♦︎本番を除外すると、規制の対象外となってしまうという説明には、矛盾がある。

♦︎何度も考える機会と相談期間、相談体制の整備を用意している、これから研修するというのは、準備不足すぎる。被害に声が上げられない、拒絶できない、相談に繋がれない人がほとんどであることが理解されていない。これまで相談しても、相談機関に断られているケースもある。契約の前に相談できない。被害に遭う前に逃げられない。相談体制の相談員は本当に専門家なのか。ワンストップセンターでさえ、スキル不足が指摘されている。契約前のスクリーニング体制が必要

♦︎撮影現場で発生したトラウマ、PTSDに関する賠償が必要、被害者を選ぶ条文になったことについても相談支援に繋がる用意という回答だった。その相談支援に問題があるという指摘にも、これから研修を充実させていくというという。


爪半月さんツイート

先日AV新法のヒアリングに参加したんですが、被写体女性の精神的苦痛が軽視されてることを疑問に感じ、 「14条に原状回復義務があるが、業者に対するギャラ返還しかないのはおかしい。おっさんたちにワラワラ囲まれてレイプされ、性的姿態を撮影された女性の精神的苦痛は回復しない。あまりにも非対称

https://twitter.com/lunuladiary/status/1529675058318557186?s=20&t=0U3MHrZAtEbYgX9G85dcWA

なのではないか。女性の精神的苦痛、トラウマに対する賠償規定がないのはおかしいと思わないのか。 女性の損なわれた尊厳に対する回復義務こそ行われるべきではないのか。防止すべきではないのか。」 という質問をしたんですが、ろくな回答が得られず、この国の暴力に対する感度の鈍さに絶望しました。

先日ある女性の参議院議員(元放送作家の方)が「原状回復ですから受け取った出演料は返さないといけません。当たり前なんです。」と力説してて、この方は業者側の損失しか視野にないのだと呆れました。 撮影された女性が受ける精神的苦痛に対して言及する議員が一人もいないことにとても驚いています。


認定NPO法人チャイルドファーストジャパン 理事長の山田 不二子さんのFBから引用

5月24日のレクチャーにおける官僚回答と5月25日の衆議院内閣委員会における発議者答弁との違い
(1) AV撮影における性交は売春に該当するか?
5月24日のレクチャー: 3. 「AVの場合、金銭の提供者が相手方ではなく業者であり、相手方はその契約ごとに特定されるので、AV制作過程で実際の性交が行われたとしても、契約に基づくものであるならば、売春の定義に当てはまらない。」
⬇️
5月25日の衆議院内閣委員会: 「売春防止法・強行法規の判断に当たっては、こういった最高裁判例(「不特定性とは、不特定の男子と性交するということではなく、不特定の男子から任意に相手方を選定したとしても、売淫は性交の対価に主眼を置き、相手方の不特定性を重視しない」とした判決)の指摘も踏まえて適切に判断しなければならない。」
※ 24日のレクチャーでは、「対償を支払う者が相手方ではなく、業者である」点も、「AV撮影における性交が売春に該当しない根拠」として示されており、25日の答弁ではその部分が解決していません。
(2) 『性交禁止』を規定しなかった理由
5月24日のレクチャー: 6. 「『性交禁止』を規定できなかったのは議員の一致をみなかったから。」
⬇️
5月25日の衆議院内閣委員会: 「罰則を設けるに当たって、罰則を科す際の構成要件を明確にする必要があったから。」
※ 3条2項に「性行為を強制してはならない」という禁止規定があって、その違反に対する罰則は規定していないわけだから、同じ立法技術を使えば、『性交禁止』を規定できたはずです。
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本日(2022年5月25日)午前、衆議院内閣委員会が開催され、『AV制作過程における性交の契約は有効』という前提で質疑がなされました。なのに、「『(金銭取引を伴う性交を)合法化』するものではない」という趣旨の答弁が繰り返されました。
法律的には、『契約有効』と『契約事項を合法と認めること』とは同義ではないということでしょうか? 非合法契約であっても、その契約自体は有効ということがあるという意味でしょうか?
確かに、従来から違法であるものを、本法律が合法化する部分はないのでしょうが、今までグレーだったものを『契約有効』としたわけですから、『合法化』とは言い切れなくても、「『合法化』への道を切り開いた」というのが実態ではありませんか?
ちなみに、本日の衆議院内閣委員会で、昨日のレクチャーにおける官僚回答と異なる答弁が得られたのは、AV制作過程における性交が売春防止法における売春に該当するのか否か(下記3)に関してのみでした。
どのような質疑があったかというと、共産党 本村 伸子議員の質問に対して、自民党 山下 貴司議員が、昭和32年9月27日の最高裁判決(「いわゆる妾のあっせんは、特定の男女間に関する限り、(現在の売春防止法に該当する)勅令2条の売淫には当たらない」と判示したうえで、「不特定性とは、不特定の男子と性交するということではなく、不特定の男子から任意に相手方を選定したとしても、売淫は性交の対価に主眼を置き、相手方の不特定性を重視しない」とした判例)を引用して、「売春防止法・強行法規の判断に当たっては、こういった最高裁判例の指摘も踏まえて適切に判断しなければならない」と答弁しました。
しかし、昨日のレクチャーでは、「対償を支払う者が相手方ではなく、業者である」点も、「AV撮影における性交が売春に該当しない根拠」として示されており、その部分は解決しませんでしたので、依然、「AV撮影における性交は売春に該当するので、売春防止法を適用できる」と言い切れるのかどうかは不透明です。
もしも、「当該『AV撮影における性交の契約』は、刑法・売春防止法・職業安定法・労働者派遣法・著作権法等、既存の法令に違反しない」という司法判断が出たら、これぞ『AV撮影における性交合法化』すなわち『金銭取引を伴う性交の合法化』への道が動き始めます。
さらに、本村議員が『性交禁止』を規定できなかった理由を問うと、山下議員は「罰則を設けるに当たって、罰則を科す際の構成要件を明確にする必要があったから」と答弁しましたが、元検事の山下議員のこの説明を山田は理解できませんでした。
「性交を禁止すると、出演者が罰せられる可能性がある」と言いたいのかもしれませんが、「『性交禁止』を規定しても、それに対する罰則を設けない」という立法方法もあったでしょうし、「罰則の対象をAV業者に限定して、出演者は罰しない」という立法技術もあったと思います。
事実、この法案の3条2項に「出演者に性行為を強制してはならない」という禁止規定があります。でも、それに対する罰則は設けられていません。
3条2項を「制作公表者及び制作公表従事者は、性行為映像制作物に係る撮影に当たっては、出演者に性行為を強制してはならず、また性交等(性交及び肛門性交、口腔性交)をさせてはならない。」もしくは、現実問題として、暴行脅迫等の強制をして性交させるAV業者などほとんどないわけですから、「強制しなければいいんでしょ」という言い訳をさせないためにも、「制作公表者及び制作公表従事者は、性行為映像制作物に係る撮影に当たっては、出演者に性交等(性交及び肛門性交、口腔性交)をさせてはならない。」と規定するのでもよかったのではないですか?
本村議員に続いて、れいわ新選組 大石 あきこ議員が質問に立ち、「付帯決議案に、共産党が『性交禁止を含め』という文言を追記しようと書き込んだが、それをあえて消して付帯決議案を完成させた」経緯を追求しました。これに対して、発議者の一人 自民党 宮崎 政久議員は「この後、検討される決議案について、私ども(超党派の発議者)はその経緯を承知していない」と答弁しました。
山田は「いくら何でも、それは嘘でしょ」と思いました。
とどめとして、大石議員が「『賛成するなら、質疑の機会を与える。反対なら、質疑の機会はない』と言われたが、これはどういうことか? 賛成の立場でここに立ってはいるが、反対意見こそ質疑がなされないと、この法案はよりよくならないはず。『陪席出席を許されているだけの少数会派にはもともと発言の機会はないので、この機会は与えなくてもよいのだが、全会一致の賛成なら、前例を超えて発言の機会を認めてもよいとしたわけで、質疑の機会を与えただけでも前例がなく、画期的だ』と言われた」ことを暴露しました。
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昨日(2022年5月24日)午後4時からのAV新法に関するレクチャーで以下の諸点が明らかになりました。
1. 「金銭取引を伴う性交の契約は有効」
2. 「有効な『性交契約』を立ち止まって考え直せるよう、契約から撮影まで1か月、撮影終了から公表まで4か月の期間を設けた。」
➡️今までグレーだったものを白にする。
3. 「AVの場合、金銭の提供者が相手方ではなく業者であり、相手方はその契約ごとに特定されるので、AV制作過程で実際の性交が行われたとしても、契約に基づくものであるならば、売春の定義に当てはまらない。」
4. 「職業安定法違反・労働者派遣法違反であっても、『取締規定』違反の場合、AV契約は無効とならない。」
➡️刑法・売春防止法・職業安定法・労働者派遣法等「既存の法律に違反すれば、契約無効」と規定したところで、それを適用できる事例はほとんどない。
➡️「AV新法に『性交禁止』を盛り込まなくても、実質的に性交禁止になっている」というのは虚偽説明だったことが判明。
5. 「『性行為を演じる人の姿態』という定義にしたとしても、実際に性交を行った出演者を救済できる立法技術はあり得た。」
6. 「『性交禁止』を規定できなかったのは議員の一致をみなかったから。」
➡️つまり、『性交禁止』に反対した議員がいた。
7. 「取消権・解除権を1年間しか行使できないこの法律では救済できない被害者が多数。」
➡️これすら知らずに、立法した。
8. 「3条2項に記載された『強制』は『暴行脅迫』より広い意味だが、マインドコントロールを含むかどうかはわからない。」
➡️多くの被害者は、グルーミングやマインドコントロールによって「自分の自由意志で契約した」と思い込まされているのに、その状況は3条2項の『強制』には含まれないらしい。
AV新法は、『金銭取引を伴う性交』の合法化に道筋を切り開く危険性が極めて高く、将来に大きな禍根を残す法律です。

認定NPO法人チャイルドファーストジャパン 理事長の山田 不二子さんのFBから引用

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